皮膚の最も外側は、角質細胞が層を成していることから
「角層」と呼ばれ、皮膚からの水分喪失、紫外線照射、
外界からの雑菌・異物などの侵入から皮膚を守っています(皮膚バリア機能)。
角層表面は分泌された皮脂による膜(皮脂膜)に覆われ、これも角層とともに皮膚を守っています。
角層がバリア機能を発揮し、皮脂膜が作られるためには、皮膚からの水分蒸散量と皮脂分泌量が適度で、
さらに角層の水分保持機能がきちんと働き、水分と皮脂のバランスが取れている必要があります。
ところが、空気が乾燥する冬は、皮膚から水分がどんどん失われ、水分と皮脂のバランスが崩れやすくなります。
すると、角層のバリア機能が低下して皮脂膜も薄くなり、結果的に皮膚の乾燥が起こり「乾燥肌」となるのです。
乾燥がひどくなると「乾皮症」となり、手指はカサカサ、
かかとはカチカチになり、痛みを伴うひび割れやあかぎれが生じます。
乾皮症がさらに悪化すると、強い赤みやかゆみ、水ぶくれ状の湿疹を伴う「皮脂欠乏性湿疹」になります。
また、指先や耳などが循環障害でうっ血して赤く腫れ、かゆみを伴う「しもやけ」が起こる場合もあります。
全身の中で乾燥しやすい部位
肌が乾燥しやすいのは、皮脂の分泌が少ない、すなわち皮脂腺が少ない部位です。
顔の中では、目や口の周り、頬、首は乾燥しやすく、額や鼻は皮脂腺が豊富にあるので、乾燥しにくい部位です。
体の中では、すね、かかと、ひざ、手、ひじなどが、外気や水にさらされる機会が多く、乾燥しやすい部位です。
また、加齢に伴って皮脂分泌量と水分保持機能は低下するので、
お年寄りの肌は乾燥しやすく、肌トラブルを生じやすいので注意が必要です。
冬の手荒れ、肌荒れ 予防法
手荒れや肌荒れを予防するには、何より乾燥を防ぎ、保湿を行うことが最も重要です。
外出時はマスクや手袋などを用い、保湿剤をこまめに塗るようにしましょう。
室内でも暖房機器によって湿度が低下するので、加湿するようにしましょう。
手洗い・入浴・家事では、洗浄力の強い石鹸やシャンプーを使用すると皮脂膜を洗い流してしまうので、
肌に近い弱酸性の低刺激製品を使います。
熱いお湯や長湯も水分を奪う原因になるので要注意。理想のお湯の温度は38~40度。
洗顔時、家事、手洗い時のみでもお湯の温度を気にかけてみてはいかがでしょうか。
洗うときはゴシゴシこすって角層を傷つけてしまわないよう、泡でやさしく洗いましょう。
そして洗浄後は、水分をタオルでやさしく(こすらず、押さえるようにして)しっかりふき取り、
早めに保湿することを忘れずに。
保湿剤としてはワセリンのほか、ヘパリン類似物質、尿素、
セラミドなどが配合のクリームやローションを用意し、こまめに使うようにします。
尿素製剤は肌トラブルがあると刺激を感じる場合があるので注意し、
かゆみや湿疹などがひどい場合は皮膚科を受診し、症状に合った薬を処方してもらいましょう。
そして、栄養バランスの取れた食事、肌の清潔、十分な睡眠も、新陳代謝を促して健康な肌を保つ上で重要です。
健全な心身を保つ生活習慣を心掛けましょう。